「傘」発刊について
きっかけはやはり『新撰21』の刊行でした。
この2009年に刊行された40歳未満の若手俳人のアンソロジーによって、
越智友亮と藤田哲史の2人は身近にいる仲間以外の、同世代の俳人を意識するようになりました。
しかしまた2人は、『新撰21』の作品の評価がかつての俳句の中にとどまっていることを感じていました。
「『新撰21』にある本当の新しさはまだ見出されていない...」
「けれど、本当の新しさは作品だけでは伝えにくいものでもある...」
そのような気持ちは、いつしか自分たちで発信できるための媒体を作りたいという思いに変わっていきました。
ただ、今ならそういったことはウェブ上でもできるにもかかわらず、なぜ雑誌という媒体に拘るのか。
それは2人が「主題なき時代」にあえて面と向かってメッセージを投げかけることの難しさを感じているからです。
このメッセージとは作品に内在するメッセージとは全く別の次元の、
「この作品はいい」という読み手が発するメッセージのこと。
そして、それを《効率よく》ではなく、《確かに》伝えたい。
そういう気持ちをつきつめた結果、やはり雑誌という形態に拘らざるをえなかった。
伝えるために努力を惜しまないこと。
そういうあたりまえのようでむずかしいことに取り組めること。
表現に誠実であるとは、実はそういうことではないか、と思っています。
越智友亮 藤田哲史
「傘」vol.1の掲載文を改稿
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